昨今、経済のみならずソーシャルセクターも急成長中のアジア。アジア各国に様々な社会的投資案件がありますが、今回は女性ならではのアイディアから生まれたインドネシアのキラキラ輝く社会的企業を紹介します。

会社名:Du’ Anyam  (ドゥ アニャム)

2014年に、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ウォートン大学などの優秀な大学卒業生(インドネシアの女性)が集まり、「栄養改善、妊婦の重労働の軽減、そして経済的自立促進を通した母子保健の改善」を使命に設立しました。インドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州(NTT)という場所(以下の赤色内)を中心に活動中で、Du’ Anyamは、設立翌年の2015年にはGlobal Social Venture Competitionの東南アジア部門を受賞した「凄腕」の企業なのです。さて、何が凄いのか、活動地域の背景から見ていきたいと思います。

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約500万からなる人口の90%以上がキリスト教徒であるNTTは、地理的に西ティモールを含み、550にも及ぶ島でできています。インドネシア全体に比べて経済的成長は遅く、識字率・就学率も20%~40%と停滞したままです。

社会的問題:こういったNTTの社会的背景から起こる、解決するべき社会的問題は以下の四点です。

  1. NTTの女性の75%は、収入がないため、政府出資の「妊娠預金計画」に参加不可能。
  2. こういった女性の夫の殆どは、他州への出稼ぎで家にいないため、女性は収入創出だけではなく食糧確保のために妊婦であるのにも関わらず畑仕事を強いられる。
  3. 妊婦としてだけでなく、畑仕事の重労働に見合う程度の栄養摂取ができていない
  4. NTTの女性の四分の一は流産か死産を経験している。

しかし、注目すべき点は

  1. NTT内で、共同農業のシステム (日替わり当番制の畑仕事)を始めている女性グループがいる事。
  2. 籐(とう)で編む商品(日本でもラタン家具として親しまれているもの)が伝統的に作られていおり、インドネシアでは約US$77億の籐工業が2012年以降、4%ほどで増加傾向にあるという事。

 

ということで、Du’ Anyamは以下の解決策を練りました。

1.重労働の軽減と籐「商品」生産
従来の共同農業では、妊娠していない時には4人分の畑を四人全員が当番制で行いながら、籐の商品も作っていましたが、一人が妊娠したら、妊婦さんは籐の編み作業のみを共同農業に加わっている4人分のものを行い、畑仕事は妊娠していない残りの四人に任せるということ。こうすることで、編み作業は一人の妊婦によって行われるため、重労働も軽減でき、畑作業も継続して行われるため、食糧確保の心配はしなくていいということになります。また、大事な「商品」となる籐の編み物も一定して生産できる、ということです。
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2. 市場アクセス(販売経路)の確保
Du’ Anyamの更なる付加価値は、個人・企業の顧客と連携してオーダーメイドの商品を作るということ。現在の企業顧客の殆どは国内の多数のリゾートホテルで、ホテルの客室に必要なスリッパ、コースター、ランチョンマットや籠などをオーダーメイドで生産・販売しています。Du’ Anyamはオーダーメイドの注文を取る際、顧客のニーズを聞きながら外部のデザイナーとコラボをする事で、より幅広い顧客への販売が可能になり、また総売上げも、従来より40%も高くなっているそうです。

個人顧客相手への市場アクセスはネット通販で行われています。個人向けへの商品は小銭入れや、ノートパソコンケースやティッシュ箱などがネットのカタログで見られ、購入可能です。

(実際に使われている商品は以下の写真です)

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一定した商品生産が可能になった環境があっても従来のように幅広い販売経路がないと、大きな収入創出には繋がりません。Du’ AnyamがNTT内の特徴に着目したことで、女性の既存のスキルを引き出し、商品化し、雇用・収入創出へつなげることができました。女性15人からスタートをした2014年の当初から比べて、2年後の現在2016年では、7つの村にて80人以上の女性の生活に変化をもたらしています。

3. 売り上げと母子保健の改善
Du’ Anyamの最終的付加価値は、商品の売り上げの行き先にあります。共同農業作業をしていた人グループ全員は、労働代金・売り上げをグループ内で分け合います。さらに、売り上げはそのグループの妊娠した女性に必要な出費や栄養摂取のためにも利用されるのです。そして、地域の医療従事者と連携し母子保健に関する教育を行い、定期検診へ行くための交通費を賄ってもらうなどと、母子保健の改善へ繋がります。Du’ Anyamのミッションである母子保健の改善は共同作業で籐の商品を売ることにより、可能になるのです。籐の商品を作る妊婦さんに投資をすることで、未来からのリターンとして、将来生まれてくる子供たちが元気に成長し、国の繁栄に貢献できるということですね。

Muhammad Yunusが提唱し現在世界各地で見られるマイクロファイナンスも、最初はバングラデッシュの文化的特徴である「共同行動」を基に作られましたが、Du’ Anyamの構造も、インドネシアに元からあった共同作業に着目し、ひねりを加えて課題解決に成功したプランであることがわかります。

2014年の設立当初にはマサチューセッツ工科大学のIDEAS Global Challengeにて、US$5,000の賞を受賞し、翌年にはGlobal Social Venture Competitionの東南アジア部門受賞、そしてUnltd Indonesiaのチャンピオンにも輝きました。現在の投資家情報は公開されていませんが、このまま成長を遂げていけば社会的インパクトの広がりに比例して、社会的投資家も増えていくでしょう。

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