パリ、アフガニスタン、トルコ、そしてシリアなどでのテロ事件や紛争、
そしてシリアにおける有志連合からの相次ぐ空爆・・・

昨今、心が痛むニュースが世界で溢れています。

その結果、世界各国の「本来の」イスラム教徒も
宗教的差別を受け始めるなど、二次災害的被害が絶えないですね。

そんな中、東日本大震災直後には日本の復興を共に願い、
助けてくださったイスラム教徒の方々の大いなる貢献は
今も私達の記憶の片隅にあるのではないでしょうか。

周知の通り、アッラーの神を拝み、ギャンブル、タバコ、
飲酒や食用豚の禁止などが特徴的なイスラム教ですが、
実は社会的責任投資、Socially Responsible Investing (SRI)の始まりは
そういった宗教的概念といわれています。

1920年ほどから当時のキリスト教やイスラム教が
禁止としてきたお酒、タバコ、ギャンブル、武器などの、
いわゆる「社会的・倫理的に好まれない産業」には投資を避ける動向が出始め、
それが徐々に社会的責任投資や現在のESG投資へと変化していきました。

私たちがあまり知らないイスラム教には、お金にまつわる習慣が多々あり、
またこれが鬱積した金融市場でもあります。

たとえば、GFC後の影響で世界的にも国際開発援助の予算は
低下傾向にありますが、イスラム金融市場規模は、
2011年時での全世界の人道支援予算(13億ドル)を15倍以上も上回る約200億ドル。

現在では、インドやイタリアの国内総生産と同等の約2兆ドルに達し、
三年後にはドイツの現在のGDPと同等の3.4兆ドルへと成長する見込みです。

今回は、日本人の私達にはあまり知られていない
そんな金融市場規模のイスラム金融の形態を一つお話します。

イスラム教国にはシャリーアというイスラム法があり、
その規定の範囲内であらゆる金融の形態があります。

その中でも注目したいものとして今回は、
イスラム教の五行の一つであるザカート(Zakat)が挙げられます。

ザカートは日本語ではいわゆる「喜捨」、または「救貧税」というもので、
毎年自分の財産の2.5%を、ザカートを管理する政府団体に税金のような形で支払い、
それらが地域レベルで社会的弱者(孤児、紛争で大黒柱をなくした未亡人など)へと
分配されるのです。また、サダカ(Sadaqa)という自主的喜捨行為を指すものでは、
ザカートよりもはるかに多く集まるようです。

下図の通り、ザカート機関は年々増加傾向にあります。

05_01

また、世界的な統計として、ザカートが一番多く集まる国は
30億ドルを誇るサウジアラビアです。

それから15億ドルまで上るマレーシアが二番目で、
世界一イスラム教徒の多い国といわれるインドネシアが3番目で2.2億ドル程です。

これらの金額が毎年、国内・外の地域開発や
国際地域開発の資金へと変わっていくそうです。

下の図では国際開発に向けた資金合計金額を世界的比較が見られますが、
2013年時点の政府開発援助で、資金援助する各国の合計を見ると
ザカートが10位以内に入るということから、ザカートの重要性は一目瞭然ですね。

05_02

さて、これほどの大きな金額と、現在の世界各国での
社会的インパクト投資を簡単に比較してみましょう。

GIINによると、全世界のインパクト投資市場は
現在約$600億ドルだそうです (2015年11月現在)。

3カ国を挙げてみると、以下の通りです。

• オーストラリア:14億ドル
• イギリス:3億ドル
• 日本:2.2億ドル

意外や意外、オーストラリアのインパクト投資市場は急成長しており、
社会的投資の歴史が長くアクターの多いイギリスよりも
はるかに金額が多いのです (2015年11月現在)。

現在インパクト投資市場は毎年約38%ずつ成長しており、
今年の段階でインパクト投資の需要の伸びは12億ドルまで到達しているそうです。

ロンドンのImpact Investment Policy Collaborativeの所属研究者、
Lütjens-SchillingとScheckによると、2016年には16億ドルへと
需要が伸びると推測されています。

ということは、上記のマレーシアの年間集まるザカートだけで
インパクト投資の需要が賄われてしまうということになります。

サウジアラビアのザカートの額はインパクト投資を現在の需要を
二倍に引き上げてくれることになるのです。

イスラム金融は一般的に日本では触れる機会が
頻繁にないので耳にすることは少ないですが、
イギリスではその金融力に着目し、
2015年の今年初めてイスラム債「スクーク」を2億ポンドで購入し、
イスラム金融の中心地になることを目指しています。

イスラム金融はなかなか侮れません。

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