ARUN インパクトレポート
〜ARUNの理念を反映した社会的インパクト評価の試み〜
大野 泉

ARUNは、去る10月22日に、今まで5年間の学びと成果をまとめた
「ARUNインパクトレポート2015」を発表しました。

このインパクトレポートは、2009年の設立以来、
ARUNがカンボジアやインドの社会起業家に対して行ってきた
計5件の投融資(うち3件は投資回収完了、2件実施中)が
実際にもたらした社会的インパクトを紹介するとともに、
5年余にわたりARUNが試みてきた、社会的投資の評価の方法や
社会的インパクトの考え方を整理したものです。

ARUNによる社会的評価は、ARUNが追求する理念(=ARUNが考える社会的投資)が
投融資の審査・実施という事業サイクルを通じて、
どのようなインパクトをもたらしたか(つつあるか)を明らかにし、
今後の事業改善、そして起業家や投資家等への
フィードバックに
活用していく目的で行われています。

私なりに、ARUNによる社会的インパクト評価の特徴を2点あげたいと思います。

第1に、各ビジネスモデルの多様性を尊重し、
事業のバリューアップを重視したプロセス志向の取組であること。
標準化された指標(IRIS等)を使うだけでなく、
投資事業のバリューチェーンの各段階において、
ARUNの資金提供とキャパシティ支援がどのように社会的価値の創出に
貢献したかに着目した評価です。そのため、起業家と投資契約を結ぶ際に、
達成や成果を図るための指標や尺度に合意し、
事業モニタリングにも活用していくなど、バリューアップとインパクト評価が
密接に連動しています。

第2に、広範なステークホルダーを巻き込んだ、
ダイナミックな価値創出に着目していること。
起業家と投資家をつなぎ、社会変革をもたらす「意思あるお金」のフローを
創りたいとのミッションにもとづき、投資先関係者に加え、
投資家の啓蒙・意識変革も評価対象に含んでいます。
広範なステークホルダーとのインタラクティブなコミュニケーション通じて
フィードバックを行い(「きらきらストーリー」、様々な活動参加など)、
社会変革の動きを広げていこうというダイナミックな発想によるものです。
社会的投資への関心の高まりをうけて、国際社会では社会的インパクト評価の方法について
様々な提案がなされています。
ひとつの潮流が、評価手法の標準化です
(例:英国主導のG8社会的インパクト投資タスクフォース)。

確かにこれは、投資家にとって、評価結果が比較可能・分かりやすいなどの利点があります。
その一方で、途上国開発の文脈で考えれば、事業・社会環境の多様性、

キャパシティ支援やバリューアップなどの観点を組み込むことも重要になります。
画一的な「解」はなく、それぞれの社会的投資が自らの理念や
重視するインパクトにもとづき、バランスある評価方法を考案していくことが大切です。
「ARUNインパクトレポート2015」は、途上国への社会的投資の
実際の経験にもとづく日本初の取組です。

あくまでも最初の一歩にすぎず、たゆまぬ改善が必要です。

同時に、パイオニアとして果敢にチャレンジし、
事業のバリューアップやステークホルダーとのコミュニケーションを重視する、
また現場感覚を大切にする、ARUNならではの評価方法を深め、
内外に発信していってほしいと思います。

No tags for this post.